森のウサギ

2018年12月22日土曜日

短編小説

t f B! P L
初出 2012.02.09 大学の課題にて

 とある森でいつも仲良く遊んでいる動物たちがいました。
 彼らはいつもみんなで川遊びをしたらい、木登りをして過ごしています。
 そんな仲の良い彼らですが、あるウサギだけはみんなと一緒に遊ぼうとはしません。
 いつも、みんなと違うことをしたがるのです。
 最初はみんなもウサギの意見を聞こうとしてましたが、だんだんとそれも減っていきました。

 ある日のこと、動物たちはみんなでピクニックに行くことにしました。
 ところが、どの道で向かうかで討論が起きてしまいました。犯人はもちろん、あのウサギです。
 みんなが安全な道を行こうと言っているのに、ウサギは滝の近くを通る道を行こうと言うのです。
 その滝はとても大きく、踏み外すと大変なことになります。
 また、近くにオオカミの縄張りもあり、とても危険です。
 みんなが反対するも、ウサギは頑として譲ろうとしません。
 そんな言い争いが激しくなってきたところで、一匹のリスが、
「そんなに言うなら君一人で行けばいいじゃないか」
 と言いました。ほかの動物たちもリスの言葉に同意します。
 ウサギは一瞬ひるんだような顔をしましたが、
「あぁわかった一人で行く!」
 と吐き捨てるように言い返し、そのまま滝のほうへ行ってしまいました。
 
 一人になったウサギは滝の近くへとやってきました。
 轟々と音を立てる滝は、今にもウサギを飲み込んでしまいそうです。
 ウサギは少しびくびくしながゆっくりと滝の近くを進んでいきます。
 すると、突然オオカミの声がしました。ウサギはびっくりして足を滑らせました。
 小さな体が宙に放り出され、真っ逆さまに滝へと向かっていきます。
 もうだめだ。
 ウサギはそう思いました。
 しかし、いくら待っても水に落ちた気配がありません。
 不思議に思って目を開けると、ウサギは空に浮いていました。
「大丈夫かいウサギさん」
 ウサギの頭上からトリの声がします。
 間一髪のところで、彼がウサギを助けたのです。
 トリはそのままウサギをみんなのところへ運びました。
 ほかの動物たちと合流できてほっとしたウサギは、
「もう意味もなくみんなと違うことはしないよ」
 と言いました。

Novella

糸繋ぎ、四季踊る
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