初出 2013.09.05 即興小説トレーニング
神様ってなんだろう。
「それでは、本日はこの辺で」
無駄にうやうやしい私の言葉に、「それ」は気配だけで返事をする。
私は何も言わずに、ふすまを閉めてその場から立ち去った。
いつもと変わらない、こんなおかしいな生活。
この家にはね、座敷わらしがいるの。
おばあちゃんにそのことを聞いたとき、私はとても幼くて、本当のことだと信じていた。
もちろん大きくなるにつれそんな思いは打ち砕かれていったけど、それでも心の奥ではまだ信じていたんだと思う。
去年の春。そのおばあちゃんは亡くなった。
お通夜があって、お葬式があって、思いっきり泣いて。
あわただしいことが全て終わってから、親戚の人たちが不安そうな目で、自分を見ていることに気がついた。
(ほんとうにあの子にできるの?)
(失敗したら大変よ)
(仕方ないだろう。それともお前がやるか?)
(いやよぜったい)
大人たちの話していることがなんなのかなんて私にはちっともわからなかった。わかりたくないとさえ思った。
おばあちゃんが亡くなって一週間後の夜。お父さんが改まった様子で私を呼んだ。
話がある、と。
――どうして私だったんだろう。
座敷わらしとやらの世話を終えるたびに、私はいつもそのことを考える。
外と隔絶されたこの屋敷で一人、そうしていると余計な雑念ばかりが浮かぶ。
けど、大事なことは思い出すことができない。
私ならできるってどういうことだったのよおばあちゃん。
遺品の中にあった毬を転がしながら、私は一人虚無を感じながらうずくまった。
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