彼女との語り

2019年2月28日木曜日

短編小説

t f B! P L


初出 2013.09.06 即興小説トレーニング

「三つ目、新しい勢力」
「……何の話?」
 本に目を落としながらぶつぶつという彼女に、私は一応問いかけた。ただの独り言に思えるような言葉だが、彼女が声を発するときは反応がほしい時だと私は知っている。
「ねぇみーちゃん。今ある大きな壁に対抗できる新しい壁を作るのにはどうすればいいと思う」
「……はあ」
 彼女の言葉が、私はよくわからない。
 しばらく一緒にいて、どうやら湾曲な比喩を多用することだけはうっすらとわかったが直訳法がわからないから結局一緒だ。
「だからね、みーちゃん。二つの勢力に新しく対抗するにはどうすればいいと思うよ」
 そのみーちゃんという呼び方、やめてはくれないものだろうか。いい歳になって恥ずかしいんだけども。
「……、新しいことを考え付くしかないんじゃないの?」
 先ほど思ったことをすべて胃の中に押し込んで、私は当たり障りのない言葉を述べた。というより、それ以外に何を言えというのだろうか。
「うーんそりゃそうよねぇ」
 ばたんと後ろに寝転がりながら、彼女は本を遠くへ投げた。壁にぶつかって、その本は地面にたたきつけられる。
 あとでちゃんと拾いに行こう。きっと彼女は腹立たしいことにそれすらしないと思うから。
「じゃあ小説の新しいことって、なに?」
 なんで、彼女は私にそれを訊くのだろうか。

「知らない」

Novella

糸繋ぎ、四季踊る
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