初出 2014.04.14
もう何度目かになるため息をつきながら、私は腕に収まった文字盤に目を落とした。
予定していた時間はとっくに過ぎていて、それでも針は無機質に時を刻んでいく。
すでに目的地行きのバスは二度見送った。
運転手さんに怪訝な顔をされ、目の前で扉が閉まるのを二度だ。
次のバスも見送ったら、もう一時間は待ったことになるのだろうか。
こんなことならいつも通り本でも持ってくればよかった。
せっかくの機会なのだからと、暇つぶし用具としか捉えられそうにないものは極力省いてきたのに、この有様だ。
――十分に、予想はできたことなのに。
それでもまだ期待して、楽しみにして、わくわくしているのはどういうことだろうか。
待ち合わせ時間は過ぎて、連絡もなくて、本当に来るかどうかもわからないのに。
「……ずるいな」
結局、好きの気持ちは私だけ。
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