「はいこれ」
「んあ?」
教室についてすぐ、ぶっきらぼうな、それでいてどこか弾んだような声とともに、俺の目の前に小さな箱が一つ置かれた。大体五センチ、いやそれよりも小さいぐらいの正方形の箱だ。丁寧に包装紙とリボンでラッピングされクリスマス飾りのようなかわいらしいプレゼントボックス。
「今年ももうそんな時期か」
「せっかくの誕生日なんだし、もう少し喜んだらいいのに」
「いや、なんか年々ぴんと来ないって言うか」
「爺臭いなぁ」
「うるせぇ」
プレゼントの送り主、家が隣の同級生である少女に、俺はそんな悪態をつく。
今日は俺の通算一六回目の誕生日。彼女からのプレゼントは、俺が物心ついた時から毎年続いている。もちろん、俺も彼女には毎年プレゼントを渡しているが、それでもこいつとはただの幼なじみだ。
小さい頃から家族ぐるみで付き合っているとお互いの誕生日は祝わないと失礼だのなんだので、毎年お互いの誕生日にプレゼントを送るのが俺たちの習慣だった。そんなのほんのガキの頃だけだろとか、友人たちに言われるも、これが当たり前だから今更やめようとは思わない。もらったのにあげないわけにもいかないし。
「そういや教室でもらうのは初めてか」
「私日直だったからね」
「おかげで少し寝坊した」
「いつまでも人を頼るんじゃありません」
にべもない。きっぱりという彼女の物言いに、俺は笑う。
「ちなみにこれの中身は?」
「秘密。家に帰るまで開けちゃダメよ」
「ふーん」
俺は手の中で、プレゼントボックスを転がした。こいつが持っているとそれなりだが、男の俺の手の中にあるとずいぶん小さく、儚げに見える。
「それじゃあ私自分の教室に戻るから」
「へいへい」
すっと、セーラー服のスカートが机にふれて、離れていく。俺から離れて教室を出ていこうとする彼女に、俺はもう一度声をかけた。
「彩愛!」
「なに、わっ」
しっかりと弧を描いて、それは彼女の胸元に飛び込んだ。危うげに受け止められたそれは、さきほどと同じような色の違う小さな箱。
目を丸くする彩愛に、俺はにやりと笑った。
「やるよ、それ」
「……バカ」
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